
BUSINESS
2021年1月12日
元バンカーが教えるお金の基礎知識「預金」ってなんだろう?
こんにちは。日々の鍛錬により貯金ならぬ“貯筋”に勤しんでおります、しょーへいです。
いきなりですが皆さん、お金貯めるの好きですか?私ですか?はい、もちろん好きです!おそらく好きな方は多いでしょう。
では皆さん、そのお金はどこに貯めていますか?
タンス預金でしょうか?または「いやいや、ジェラルミンケースに入れて常に肌身離さず持っているぜ!」という人もいらっしゃいますかね?様々な方がいると思いますが、きっと多くの方が銀行などの金融機関に預けているのでは。
当たり前のように行われている「銀行に行ってお金を預ける」というこの行為、よーく考えてみると不思議に思いませんか?
大切なお金を他所様に預けてしまうんですよ。しかも、お金を預けていると利息まで(とても微々たるものですが)付きますよね。なんでーってなりませんか?なりますよね!
今回はそんな身近な存在でありながらも改めて考えると疑問もある預金について、元バンカーである私しょーへいが説明していきます。
CONTENTS
1 預金とは?
預金とは読んで字の如く、金融機関にお“金”を“預”けるということです。いやいや、そんなことはわかっていますよという声が聞こえてきますね。
皆さんからしますと、お金を安全に保管してもらい、微々たる利息を受取るといったところでしょう。現金を自宅に保管していたら場所もとられるし、盗難のリスクもありセキュリティーにも難がありますもんね。
2 金融機関からみる預金の働き
では次に視点をかえまして、金融機関からしますと預金はどのような働きをするのでしょうか。
銀行は、お客さまからお預かりしたお金を「運用」(貸出しなど)することで利息を得ており、お客さまへお支払いする預金利息は、その運用収益の中からお支払いしています。
「お客様からお預かりした預金を信用という名のもとに、お金を必要としている人に貸してあげよう!でも、お客様の資産をタダでは貸し出せないから、返してもらう時に利息を上乗せしてもらおう!」という融資も絡むお話しになってしまうので、融資に関する詳しいことはまたの機会にし、今回は預金の大まかな用途について説明します。
2-1 融資の資金に充てられる
金融機関の業務の一つである預金業務は、皆さんからお金を預かること。この預かったお金を用いて融資、いわゆる貸し出し業務を行っています。
2-2 有価証券の購入
NPOのような非営利団体とは異なり、もちろん金融機関も利益を生み出すことは必要。
しかし、昨今では金融機関の本業である融資による利息収入のみでは利益を出すことが困難な状況。
そこで、金融機関も投資施策を行い有価証券を購入しています。このことにより利息収入とは別口からの収益を得ることが狙いです。
3 いろいろある預金の種類
預金と一言で言っても多くの種類があります。その中で大別すると性質上大きく二種類に分けることができます。
出し入れ自由な「要求払預金または流動性預金」と、預入期間に定めのある「定期性預金」の二種類があります。
3-1 要求払預金または流動性預金
要求払預金または流動性預金とは、いつでも要求に応じて払戻しができる預金です。皆さんに馴染みがある普通預金や当座預金の他、あまり聞き慣れない貯蓄預金、通知預金、納税準備預金、別段預金などがあります。
今回はこの中から、普通預金と当座預金について触れていきましょう。
普通預金
きっと皆さんが一番馴染みのある預金ではないでしょうか。普通預金は期間の定めがなく1円単位でいつでも必要なときに自由に出し入れすることのできる預金です。
また、公共料金やクレジットカード利用代金の自動振替の指定口座、給与振込等の受取口座にすることができます。
当座預金
当座預金では、売買した代金を現金や振込のほかに手形や小切手を使用することが可能。
手形や小切手を振り出すためには、あらかじめ支払資金を預金しておき、手形や小切手の支払いを金融機関に委託する必要があります。この支払資金を預けておくために開設された預金を当座預金といいます。
分かりづらいですね。平たく言えば、「あー、支払いのために出金したり振込するの手間なんだよなー。金融機関さん、うちのお金預けておくからさ、取引先との売買で振込や現払いではなく、小切手や手形使って簡単に取引させてよ!」というニュアンスです。
なお、当座預金は無利息となっています。
3-2 定期性預金
定期性預金とは、要求払預金とは異なり、預入れから一定期間を経過しないと払戻しのできない預金です。代表的なものに定期預金、定期積金があります。
定期預金
定期預金は、満期期間を定めてその期日までは原則として払戻しができない預金です。預ける期間が長ければ、それに従って高い金利が支払われますので、貯蓄性預金として最適です。
定期積金
定期積金は、長期にわたってあらかじめ設定した金額を定期的かつ継続的に積立てることを条件として、満期日に利息に相当する給付補てん金と掛込金の合計額、すなわち、給付契約金を交付するという内容のものです。
またもや分かりづらいですね。これも噛み砕いて言うならば「毎月決まった金額を積み立てて積み立てて積み立てていくと、知らず知らずのうちにまとまった金額になっていました!しかも、満期になったら利息っぽいものを上乗せするよ!」という認識です。こちらも定期預金と同様に貯蓄性が高いです。
3-3 その他の預金
財産形成預金
会社員の方はこちらも馴染みがあるのでは。財産形成預金は、一般に「財形預金」といわれ勤労者の貯蓄の促進や住宅取得を目的とした預金のことです。
・一般財形預金:使用用途は自由な預金
・財形住宅預金:住宅の取得や増改築等の促進を図る目的の預金
・財形年金預金:老後の生活の安定を図る目的の預金
財形預金には上記の三種類があり、事業主が勤労者の給与から天引きして金融機関に預入れするという特徴があります。
総合口座
今まで普通預金や定期預金など預金のことを説明していたにも関わらず、なぜ口座?と思われた方もいるかもしれません。まぁそう言わず、皆さんお手持ちの通帳を見てください。多くの方の通帳には総合口座と記されていると思います。
「総合口座?いや、自分の口座は普通預金なんですけど。」とお思いの方もいるのでは。
総合口座とは、1冊の通帳に「普通預金」「定期預金」「当座貸越(これまた平たく言えばお金を借りること)」をセットした口座です。
例えば、普通預金の残高を超えてお金が必要になった場合、または公共料金等の引き落としで普通預金残高に不足が生じた場合に、定期預金を担保に自動的に融資が受けられます。
4 気にされてる方も多いのでは?預金の金利について
預金していると不思議なことに利息が付きますよね。この利息は皆さんから預かった預金を、一章でも触れた融資や有価証券の運用による利益の一部を利息として支払っています。
利息の金利は通常一年間について計算され、年利◯%や、年◯%として表示されています。また、利息の計算方法には単利と複利があります。
4-1 単利
単利とは、一定期間の元金に対してのみ利息を計算する方法をいいます。単利の場合利息は「元金×期間×利率」の式で算出できます。
【単利 例】
元金 | 1,000,000円 |
預入日 | 令和元年4月1日 |
預入期間 | 1年 |
利率 | 年1% |
満期日 | 令和2年4月1日 |
利息計算 | 1,000,000円(元金)×365日(期間)×1%(利率)/365日(年率なので一年間の日数で割る)=10,000円の利息 |
単利は比較的わかりやすいですかね。ざっくばらんに言いますと、預けた額に利率と期間を掛け合わせた数字が利息です。
4-2 複利
複利とは、満期日までの間に一定期間(半年など)ごとに利息を計算して、これを元金に足します。満期日には「元金+半年分の利息」に対して利息を計算する方法をいいます。
【複利 例】
元金 | 1,000,000円 |
預入日 | 令和元年4月1日 |
預入期間 | 1年(半年ごとに複利計算) |
利率 | 年1% |
満期日 | 令和2年4月1日 |
利息計算 | ①1,000,000円(元金)×183日(期間)×1%(利率)/365日(年率なので一年間の日数で割る)=5,014円の利息 |
②1,000,000円(元金)×182日(期間)×1%(利率)/365日(年率なので一年間の日数で割る)=4,986円の利息 | |
①5,014円+②4,986円=10,000円の利息 |
一般的に同じ元金を同じ期間、同一利率で預金すると、単利と複利では複利の方が利息額は多くなります。
4-3 実は預金利息にも税金は掛かっています
上記で利息の計算について触れましたが、実は計算後の利息額をそっくりそのまま支払われる訳ではないのです。ええそうです、利息にも税金が掛かっています。
この利息に対して原則20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率が適用されます。
※一部利息に対して非課税の制度もあります。
5 大切な資産を守ります!預金保険制度
ここまでで預金の概要、種類、利息の計算と大まかに預金について理解されたことでしょう。
これからも私達の大切なお金を金融機関に預けて、利息も付けてもらって安心安全万々歳!と結びの言葉で締めくくろうと思ったのですが、ここで一つ質問です。
万が一、皆さんが預金をしている金融機関が破綻した場合、預金してあるお金はどうなってしまうのでしょうか?
破綻してしまったから泣き寝入り?はたまた全額保護?
一般社団法人全国銀行協会では預金保護に関して以下のように定義されています。
預金保険制度とは、万が一、金融機関が破綻した場合、預けた預金を一定の金額まで保護する仕組みです。預金保険は、預金保険制度に加入している金融機関に預金等をすると自動的に成立します。
本章では、預金保険制度について触れていきましょう。
預金保険制度には二つの仕組みがありますので説明したいきます。
5-1 資金援助方式
破綻金融機関の受け皿となる金融機関が預金等を引き継ぐ場合に預金保険機構がその引継ぎを容易にするため、必要な資金を援助する方式。
「◯◯さん破綻しちゃったのか。じゃあうちが◯◯さんのお客さん引継ぐから預金保険機構さん、その際は援助よろしく!」といった、受け皿となった金融機関に対する援助のこと。
5-2 ペイオフ方式
こちらは耳にした方も多いのではないでしょうか。
破綻金融機関の預金者に対して預金保険機構が預金(保険金)を支払う方式。
「うわー破綻したー。まずい。私達ではいかにもすることができませんので、預金保険機構さん、お客さんに預金支払いお願いします。」といった、預金者に対する援助のこと。
ここで一つ注意点
上記二つのいずれの方式でも、当座預金や利息の付かない普通預金等の決済用預金は全額保護されますが、個人・法人等を問わず1金融機関につき1預金者あたり元本1,000万円までとその利息を保護します。
また、1,000万円を超える部分やその利息、預金保険の対象になっていない預金等については、破綻金融機関の財政状況に応じて支払われます。
【預金保険 例】
明智光秀さんは、A銀行A支店に「普通預金500万円」・A銀行B支店に「普通預金700万円」預金があると想定します。
先程も説明した通り1金融機関につき1預金者あたり元本1,000万円までとその利息が保護されますので、明智光秀さんの預金が保護される額は「普通預金1,000万円+利息」ということになります。
残りの「普通預金200万円+利息」は破綻金融機関の財政状況により、支払われる可能性があるかもしれないという程度に考えておきましょう。
最後に
今回は、預金について説明しました。大きく分けて四つ。
- 預金の役割
- 預金の種類
- 預金の金利
- 預金の保護
昨今では、「貯蓄から投資へ」という流れが強まってきています。ゼロ金利政策により、預金を利殖(利子によって資産を増やすこと)手段として考えることは難しくなっています。
だからといって、預金の重要性が薄れたわけではありません。
個人預金の貯蓄目的には「病気・災害への備え」、「老後の生活資金」、「子供の生活資金」、「住宅取得や増改築資金」など利殖以外にも重要な役割を担っていることが分かります。また、電子決済等の決済機能が飛躍的に向上した現在において、預金口座は社会生活上必要不可欠のインフラになっているとも言えるでしょう。
このような時代だからこそ預金という形で、前もって備えてお金を作っていく必要性が増してくるのではないでしょうか。