
BUSINESS
2021年5月28日
元バンカーが教えるNISA・iDeCoの違いとそれぞれの特徴って?
こんにちは、雨の日が続き湿気で髪の毛がまとまらないしょーへいです。
突然ですが、数年前に「老後2,000万円問題」というフレーズがメディアで取り上げられ話題になったのを覚えていらっしゃいますか?
ここでこの問題に深く触れることはしませんが、このフレーズにより多くの方が老後資金に対して考えるきっかけとなったことでしょう。
「老後資金を準備するには何から着手すべき?」「預貯金だけで全て賄うことは可能か?」「家計の生活資金や加入している保険も見直しが必要かも。」など考えられることは多岐に渡りますよね。
その中でも投資による資産運用も選択肢に入るのでは。
「でも投資は初めてで…」という方も多いはず。昨今ではそのような方でも取り組みやすい制度が充実していて、その制度1つに「NISA」や「iDeCo」があるのです。
これらの名前は聞いたことあるけど実際にどのような制度なのかは全くわからないという方もいらっしゃることでしょう。
ですがこの2つの制度、うまく活用すると節税効果もありとてもメリットが多いのです。
そこで今回は資産運用を考える際によく出てくるワードNISAとiDeCoの特徴やこれらのメリット・デメリットなどをまとめてみました。
NISAとiDeCoに興味があるという方はぜひ参考にしてみてくださいね!
CONTENTS
1 そもそもNISAとiDeCoって何のこと?
NISAとiDeCoについて説明する前にまず皆さんに知っておいてもらいたいことがあります。
それは投資で得た利益には税金がかかるということです。
あーやっぱりね…と思いの方も多いでしょう。
例えば個人で株や投資信託の売買取引を行い100,000円の利益が出たとしましょう。この100,000円をそっくりそのまま受け取れるのではなく、実際はこの額に20.315%の課税分を差し引いた額を受け取るのです。
計算すると100,000円(利益)−20,315円(税金)=79,685円
よって79,685円を受け取ることになるのです。なかなかの額が税金で引かれますよね…
「こうも税金で引かれてしまうとな…」「何か良い制度ないの?」
そのようにお考えの方に適した制度こそがNISAとiDeCoなのです。これらは投資や資産運用に有利な制度を設けようと国が主導して行っている施策の1つ。
この両制度を活用すると運用で生じた利益や投資した額を非課税できるなどの税制優遇を得ることができます。
税制優遇のあるNISAとiDeCoは、資産運用を始めてみたいと思われている方の第一歩として取り組みやすい制度と言えるでしょう。
2 投資の運用益が非課税に!NISAの種類と特徴
それでは本記事の本題に移り、それぞれの制度を解説していきます。まずはNISAから!
一言にNISAと言っても実は種類があり、NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類があります。
それぞれに特徴や細かいルールがあるので、ポイントを押さえつつ1つずつ見ていきましょう。
2-1 NISA
NISA(NIPPON Indivisual Savings Account=少額投資非課税制度)とは、株式や投資信託で得た運用益を非課税にする制度のこと。
NISAを活用した口座では年間120万円までの投資元本で得た利益を非課税とし、5年間利用可能なため最大600万円の投資元本で得た運用益を非課税にすることが可能です。
仮に1年間で120万円分投資信託を購入し、40万円の利益を出したとしても課税されず40万円そのまま受け取ることができます。
また5年間の非課税期間が終了しても「ロールオーバー」という手続きをすることで、さらに5年間非課税の制度を活用することが可能です。
しかしロールオーバーを行った場合、その金額分だけ翌年の非課税枠で運用できる金額は少なくなるのでご注意を。
2-2 つみたてNISA
つみたてNISAはその名のとおり、NISAの積立投資版と捉えてください。
つみたてNISAを活用した口座では年間40万円までの投資元本で得た利益を非課税とし、20年間利用可能なため最大800万円の投資元本で得た運用益を非課税にすることが可能です。
NISAとは異なりロールオーバーの手続きを行うことはできず、投資商品も限定的ですが、ロングスパンで継続的な資産運用を行いたい方に適した制度と言えるでしょう。
2-3 ジュニアNISA
ジュニアNISAは0歳〜19歳の子供や孫の資産運用をサポートした制度で、NISA の子供版と捉えてください。
ジュニアNISAを活用した口座では年間80万円までの投資元本で得た利益を非課税とし、5年間利用可能なため最大400万円の投資元本で得た運用益を非課税にすることが可能です。
また親権者などが代理で運用可能で、原則18歳まで払い出しが不可能となっています。
3 公的年金とは別に個人で運用する私的年金iDeCo
iDeCo(individual-type Defined Contribution=個人確定拠出年金)とは国民年金や厚生年金とは別に個人で資産運用して年金を作る制度です。
企業年金とは異なり、個人で掛金などを設定することが可能なため老後資金の準備に適している制度です。
3-1 iDeCoの特徴
NISAは投資で得た利益に対して非課税となり、このメリットはもちろんiDeCoにも適用されています。
さらにiDeCoには投資した掛金全額が所得控除することが可能です。このことにより、所得税と住民税の節税効果を得ることができます。
また資金を受け取る際も「退職所得控除」や「公的年金等控除」の対象となるなど多くのメリットがある制度と言えるでしょう。
4 NISAとiDeCoの比較とメリット・デメリット
前章ではNISAとiDeCoの主な特徴を紹介しましたが、ここからは両制度のより詳細な特徴を比較しながら見ていきましょう。
以下の表にNISAとiDeCoの詳細をまとめました。
NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | iDeCo | 特定・一般口座 | |
年齢制限 | 20歳以上 | 20歳以上 | 0~19歳 | 20歳以上60歳未満 | 制限なし |
非課税期間 | 5年(ロールオーバーを行うと最長10年) | 20年 | 5年(ジュニアNISAの口座開設期間終了後は継続管理勘定に資産を移管することで、20歳になるまで非課税での継続保有が可能。) | 運用期間中 | 制限なし |
運用商品 | 株・投資信託・ETF・REIT | 国が定めた一定要件を満たし、金融庁に届け出のあった投資信託とETF | 株・投資信託・ETF・REIT | 定期預金・保険・投資信託 | 制限なし |
運用商品の変更 | 可能だが売却時に非課税枠(購入時に使用した枠)は消滅 | 可能だが売却時に非課税枠(購入時に使用した枠)は消滅 | 可能だが売却時に非課税枠(購入時に使用した枠)は消滅 | 可能 | 可能 |
資金の引き出し | いつでも可能 | いつでも可能 | 18歳まで原則不可能 | 60歳まで原則不可能 | いつでも可能 |
最低運用額 | なし | 100円 | なし | 5,000円 | なし |
年間運用額の上限 | 120万円 | 40万円 | 80万円 | 14万4,000円~81万6,000円(自営業・会社員・公務員等で積み立て限度が異なる) | 制限なし |
累積運用額の上限 | 5年間で600万円 | 20年間で800万円 | 5年間で400万円 | 上限なし | 上限なし |
拠出時の税制優遇 | なし | なし | なし | 全額所得控除 | なし |
運用時の税制優遇 | 運用益非課税 | 運用益非課税 | 運用益非課税 | 運用益非課税 | なし |
受取時の税制優遇 | なし | なし | なし | 公的年金等控除 | なし |
4-1 NISAのメリット・デメリット
NISAのメリットは以下の4点。
- 運用益が全額非課税
- 運用額の上限が120万円と枠が大きい
- 幅広い商品ラインナップ
- 資金の引き出しがいつでも可能
運用益が全額非課税というメリットはもちろんのこと、120万円の運用枠で個別株式や投資信託など幅広く運用できる点はNISAの魅力の1つです。
またいつでも資金が引き出せる柔軟性もNISAのメリットと言えるでしょう。
逆にデメリットとしては2点あげられます。
- 損益通算・繰越控除ができない
- 課税口座に移管した際に時価で購入したとみなされる
運用益に対して非課税となるメリットがある反面、運用損失に対しても税計算上無いものとされてしまうデメリットも。
NISA以外の証券口座である特定口座や一般口座であれば、保有する有価証券の利益と損失を相殺すること(損益通算)が可能です。
しかし、NISA口座では損益通算を行うことができず損失の繰越控除(一般口座や特定口座にて確定申告をした際に、その年に発生した損失を3年間繰越して税金の控除を受けるられること)も行うことができません。
またNISAの非課税期間が終了し、特定口座などに移管された際はその時の時価で購入した扱いになってしまいます。
例えば、NISA口座で100万円の株式を購入したが50万円まで値下がってしまったとしましょう。50万円まで値下がったまま非課税期間が終了しNISA口座が特定口座に移管されました。
もし移管して少し経った頃に100万円まで値を戻したとしても、50万円の運用益が出たとみなされ課税の対象となってしまうのです。
4-2 つみたてNISAのメリット・デメリット
つみたてNISAのメリットは以下の4点。
- 運用益が全額非課税
- 非課税期間が20年と長い
- 運用商品が国の基準を満たした投資信託とETF
- 資金の引き出しがいつでも可能
資金の引き出しがいつでも可能である点や運用益の非課税に関してはNISAと同様ですが、つみたてNISAは非課税期間が20年と長きに渡ります。コツコツと長期の資産運用を行いたい方にはメリットと言えるでしょう。
また運用商品は国が定めた一定要件を満たし、金融庁に届け出のあった投資信託とETF(上場投資信託)に限定されています。商品の安全性が高いため初心者や投資経験の浅い方にも安心して取り組むことができるメリットがあります。
つみたてNISAのデメリットもNISA同様です。
損益通算や繰越控除ができないこと、非課税期間が終了し課税口座に移管した際にその時の価格が時価とみなされることの2点があげられます。
4-3 ジュニアNISAのメリット・デメリット
ジュニアNISAを活用することで家族全員がNISAを利用することできます。先にも説明したとおり実際に運用するのは、両親や祖父母である点も大きな特徴です。
ジュニアNISAのメリットは以下の2点。
- 運用益が全額非課税
- 相続税対策にも活用可能
運用益の非課税に関しては上記2つのNISAと同様ですが、ジュニアNISAのメリットが他のNISAと大きく異なる点が相続税対策にも活用できるという点です。
贈与税は、1年間の贈与額が110万円の範囲内であれば課税の対象外となります。
仮に祖父母が孫のジュニアNISA口座で年間80万円投資をしたとしてもその額は110万円以内で非課税となるため、生前贈与を行う相続税の対策も兼ねることができてしまうのです。
ですが、ジュニアNISAにも他のNISAとは異なるデメリットも存在します。
- 18歳まで原則資金の引き出しが不可能
- 2023年12月末でジュニアNISAの制度が終了
たとえ0歳からジュニアNISAを始めて5歳で非課税期間が終了しても、その後18歳になるまで資金の引き出しは不可能です。
さらに、このジュニアNISAは多くのメリットがある制度なのですが2023年12月末をもって制度自体が終了し、それ以降新規の買付ができなくなってしまうのです。
これは大きなデメリットと言えるでしょう。
4-4 iDeCoのメリット・デメリット
iDeCoのメリットは前述のとおり何と言っても節税効果が高いことがあげられます。
大きなメリットとしてあげられるのは以下の3点。
- 掛金が全額所得控除となり所得税や住民税を節税することが可能
- 運用益に対しても全額非課税となる
- 受取時には退職所得控除と公的年金等控除の対象となる
一方でiDeCoのデメリットは以下の3点があげられます。
- 資金の引き出しが60歳まで不可能
- 手数料がかかる
- 掛金に上限がある
手数料にはiDeCo加入時の手数料、運用時にかかる手数料など様々な手数料が発生します。この手数料は金融機関によってそれぞれ異なるので、金融機関の選び方が手数料を抑えるポイントとなるでしょう。
また会社員、公務員、自営業などで掛金の上限が設定されています。
職業 | 掛金上限(月額) |
自営業者など(第1号被保険者) | 68,000円 |
専業主婦(夫)など(第3号被保険者) | 23,000円 |
会社員(第2号被保険者)※企業年金に加入していない | 23,000円 |
会社員(第2号被保険者)※企業型確定拠出年金のみ加入 | 20,000円 |
会社員(第2号被保険者)※企業型確定拠出年金以外の企業年金等に加入 | 12,000円 |
公務員・私立学校教職員(第2号被保険者) | 12,000円 |
誰でもいくらでも掛金を上げられるということではなく、職業や勤め先の企業年金の有無によっても大きく異なりますので予めチェックしておくことをおすすめします。
5 NISAとiDeCoどちらから始める?
ここまでNISAとiDeCoの特徴やメリット・デメリットを紹介してきました。
これらのポイントを踏まえてどの制度から活用したら良いのかをパターンに分けてみましたので、参考にしてみてください。
5-1 積極的に投資をしたい場合はNISA
NISAで運用可能な商品は幅広く、株式はもちろんのこと投資信託やREIT(不動産投資信託)も含まれているので積極的に投資を行いたいという方はNISAを活用してみると良いでしょう。
また投資額の上限が年間120万円ではあるものの他の制度と比較すると枠が大きいので、ある程度まとまった資金で運用したい方にも適しています。
5-2 これから投資をしてみたい・今後まとまった資金が必要な場合はつみたてNISA
つみたてNISAは投資額の上限が年間40万円で、月々最大約33,000円の投資額です。
月々の投資額を低く設定することが可能であるため、これから投資を初めてみようという方にも取り組みやすいと言えます。
また途中で解約可能であるため、住宅購入資金に充てたり、子供の教育資金に充てるなど20年以内にまとまった額を使う予定がある方はつみたてNISAを活用してみると良いでしょう。
5-3 老後・定年後の資産を準備したい場合はiDeCo
資産運用を老後資金に特化させるのであればiDeCoが良いでしょう。
60歳まで資金の引き出しができないというデメリットもありますが、拠出、運用、受取時全てに税制の優遇が受けられるため、長期運用かつ老後資金の準備には最も適した制度と言えます。
6 2つの制度を併用することもおすすめ
NISAとiDeCoはそれぞれ別の制度なので併用することが可能です。
まとまった資金を運用させつつ、老後資金の準備を行いたい方はNISAとiDeCoの併用を。コツコツと積立投資を行いながらも税制優遇をフル活用したい方はつみたてNISAとiDeCoを活用すると良いでしょう。
前述しましたがNISAとiDeCoのどちらも月や年で投資額の枠に上限が存在します。どちらか片方を活用すれば十分ということはなく、両制度を併用することで2つの良い面を享受しながら資産運用が行うことが可能です。
まとめ
NISAとiDeCoは投資という枠組みでは似ているものの、実際は全く別々の制度です。ですが税制優遇など多くのメリットがある制度であることはお分かりいただけたのではないでしょうか。
ご自身の目的や希望の運用方法を加味して制度を選ぶと良いかもしれませんね。
最後に各制度のポイントをまとめると
- NISA:まとまった資金で積極的に投資を行いたい
- つみたてNISA:長期間でコツコツと積立投資を行いたい
- ジュニアNISA:家族全員で税制優遇のメリットを得たい・相続税対策も行いたい
- iDeCo:公的年金の他にもう1本老後資金を準備しておきたい
再三になりますがこれらの制度は税制優遇のメリットが大きいです。それぞれの特徴をしっかりと理解し、今後の資産運用における1つの手段として活用してみてはいかがでしょうか。