新しいビジネスモデル「D2C」について学ぼう

こんにちは。イチロー選手のような、中継を使わずともダイレクトに返球できる強い肩が欲しいと切望するしょーへいです。

そんな切望はさておき、今回しょーへいがお届けするテーマは「D2C」

D2Cというワードを皆さん耳にしたことはあるでしょうか?B2BやB2Cは聞いたことあるけど、D2Cっていったい何のことだろうと疑問に思われる方もいらっしゃるのでは。

実はこのD2C、近年の加速度的なインターネット普及や、ECサイトの隆盛によって関心の高まっているビジネスモデルです。

しかも一過性のブームに収まらず、今後多くの業態に影響を与え、将来的には「D2C以前」「D2C以降」と分類されるのではと推測されています。

本コンテンツではD2Cの意味や特徴、メリット・デメリットなど詳しく解説していきます。

1 D2Cとは?

D2Cとは「Direct to Consumer」の略語で、メーカーが消費者と直接取引をする仕組みのこと。中間業者(卸売業者・小売業者)を介さない販売スタイル、すなわち直販です。

直販というビジネスモデルは従来から行われていますが、ここでいう直販はITの要素を加えた直販であり、ブランドやメーカーが企画・立案・製造を行ない、その商品を自社のECサイトで販売を行うことを指します。

1-1 D2Cの定義

従来の伝統的なブランドと比較した場合、D2Cブランドは以下のように定義されています。

ブランド D2Cブランド 伝統的なブランド
出発点 デジタルネイティブ メーカーとして誕生
チャネル 直接販売・直接コミュニケーション 小売経由で間接販売・広告代理店経由で間接コミュニケーション
価格帯 安価 中間コスト込みのため高価
成長速度 指数関数的成長 堅実な成長
価値提供 ライフスタイル(世界観) プロダクト(機能)
ターゲット ミレニアル世代以下 X世代以上
顧客の位置づけ コミュニティであり仲間 お客様

1-2 前提がテクノロジー企業である

D2Cブランドはメーカーであるものの、テクノロジー企業としてスタートしています。

D2Cブランドは従来の伝統的ブランドとは異なり、データ分析やSNSを通じたコミュニケーションを行ない、施策の結果を細かく分析しています。

1-3 ターゲット層がミレニアル世代以下

D2Cではミレニアル世代以下をメインターゲットとしています。ミレニアル世代とは、1980年代〜1990年代後半までに生まれて、2000年代に成人となる世代のことです。

このミレニアル世代はデジタルの発展と共に育っているため、ネットで何かを購入することに抵抗を感じていません。そのため、新しい消費の価値を持つ特徴を有していると言えるでしょう。

1-4 「プロダクト」ではなく「ライフスタイル」の提供

D2Cではプロダクトを提供するのではなく、プロダクトを通して創造される世界観やライフスタイルを提供しています。

単なるプロダクトの売り切り型ではなく、むしろプロダクトの提供はD2Cにとってはスタートであり、その後の消費者にライフスタイルを提供することが重要なポイントとなります。

世界観を通じてプロダクトをコンテンツ化し、ブランドをメディア化させている点が大きな特徴でしょう。

2 D2Cが注目される背景

D2Cは近年注目され始めましたが1章でも触れたとおり、ビジネスモデルとしては全く新しいモデルというわけではありません。

では、注目を集める背景にはどのような要因があるのでしょうか。

2-1 ECサイト利用の増加

今では誰しもが1人1台スマートフォンやPCを持っています。そのため、いつでもインターネットにアクセスすることが可能な環境になりました。また、ECサイトの隆盛により人々の消費行動はeコマースへシフトしてきています。

電子商取引に関する経済産業省の調査によると以下の通りです。

令和元年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、19.4兆円(前年18.0兆円、前年比7.65%増)に拡大しています。また、令和元年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は353.0兆円(前年344.2兆円、前年比2.5%増)に拡大しています。
また、EC化率※1は、BtoC-ECで6.76%(前年比0.54ポイント増)、BtoB-ECで31.7%(前年比1.5ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展しています。

引用元:経済産業省 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

この調査からも見て取れるように、私たちの消費行動はインターネットへシフトしています。この傾向はD2Cが注目される要因の1つと言えるでしょう。

2-2 SNSの利用増加

SNSの利用増加もD2Cビジネスの追い風になっているでしょう。

今では多くの方がさまざまなSNSを利用しています。TwitterやInstagramなどSNSの普及に伴い、検索エンジンからの情報収集のみならずSNSで情報を収集する機会も増えています。そのため、企業サイドは消費者に対して直接アプローチすることが容易に。

SNSを利用し多くの消費者に対して情報を発信することができるので、卸売業者や小売業者などの流通チャネルを確保する必要性が無く、直接消費者に商品を届けることが可能になりました。

2-3 資金調達の選択肢増加

資金調達の変化もD2Cに影響を与えています。

元来、金融機関やベンチャーキャピタルからの融資や出資にて資金を調達していまいたが、昨今ではクラウドファンディングでの資金調達も行われるようになりました。

事業計画や商品コンセプトなどに共感してもらうことにより、融資や出資と比較すると資金調達のハードルは低くなり、ビジネスへ参入しやすくなったことも要因でしょう。

3 B2B・B2C・C2Cとの違い

ビジネスにおいてD2C以外にもB2B、B2C、C2Cなど混同しやすい用語があります。ご存知の方も多いでしょうが、それぞれの違いを見ていきましょう。

3-1 B2B

B2Bとは「Business to Business」の略語で、企業と企業の取引すなわち企業間取引のことです。

法人を対象とした取引であるため、高額な取引額になる傾向があります。B2Bでは消費者を介さない点がD2Cとの相違点でしょう。

3-2 B2C

B2Cとは「Business to Consumer」の略語で、企業と消費者の取引のことです。私たちがコンビニやスーパーでお買い物をするスタイルを想像してもらうとイメージしやすいかと。

企業と消費者が取引する点で、D2CとB2Cを混同して考えられがちです。しかし、B2Cでは企業と消費者の間に中間業者を介しますが、D2Cでは消費者と直接取引を行います。

この仲介業者を挟むか挟まないかという点がD2CとB2Cの大きな相違点でしょう。

3-3 C2C

C2Cとは「Consumer to Consumer」の略語で、消費者と消費者の取引のことです。

近年では、フリマアプリやネットオークションサービスでの取引が人気を集めています。C2Cも企業を介さない点がD2Cとの相違点でしょう。

4 D2Cのメリット

D2Cのビジネスモデルには以下3点のメリットがあげられます。1点ずつ見ていきましょう。

4-1 収益性が高い

D2Cは従来のB2Cなどのビジネスより利益を上げやすいビジネスモデルでしょう。

例えば総合ECサイトに出店する場合、出店手数料、販売手数料、システム使用料等の諸経費が掛かってしまうのです。

一方で、D2Cでは商品の企画立案、製造、マーケティング、ECサイト運営、販売、配送など全ての工程を自社で行います。そのため手数料等の諸経費が掛からず、適正価格にて商品を販売したり、商品のクオリティ向上へ資金を当てることが可能です。

4-2 顧客データを収集しやすい

D2Cでは顧客データの収集を容易に行うことが可能です。

従来であれば購買データは中間業者を介して入手していましたが、D2Cでは全ての工程を自社で行うため、顧客データも直接入手することができます。

また、得た顧客データは属性、購買履歴、ECページ内の滞在時間や離脱ページなど詳細であるため、PDCAサイクルを回し効率的なプロモーション活動に繋げることも可能でしょう。

4-3 SNSとの親和性

D2Cではメーカーと消費者が直接繋がっています。そのためSNSとの親和性が高く、メーカーの理念や、商品コンセプトを消費者に直接届けることが可能です。

消費者はメーカーの思いに共感して商品を購入することができます。それゆえ、メーカーは自然とロイヤリティの高い顧客を誘導できるでしょう。

SNSの活用によって、ブランドイメージや世界観を示し、ファンを獲得することにより継続的な取引に繋げられます。

5 D2Cのデメリット

D2Cには前述したとおりメリットがある一方で、デメリットも存在します。ここでは2点あげますので、1点ずつ見ていきましょう。

5-1 全工程を自社で行う

D2Cのデメリットの1つが商流に乗せるルートを自社で構築する必要があることです。

4章で説明したとおり、総合ECサイトにて出店する場合は中間マージンを支払う必要がありますが流通のプラットフォームを1から構築する手間を省くことが可能。

しかしD2Cではこれらを自社で構築する必要があり、環境を整えるまでの初期費用が掛かってしまいます。また、初期費用が掛かってしまった分、そのコストを回収するまでにある程度のスパンを要してしまうこともあるでしょう。

5-2 認知拡大・マーケティング施策の設計

D2Cのデメリットにあげられる2点目は、認知拡大に時間を要することです。

消費者にとってどれだけ魅力的な商品を開発しても、認知してもらえないと販路を拡大させることは難しいです。

ECサイトを運営するのであれば、サイト流入をどのように行うのか。SNSを活用して認知拡大を行うのであれば、どのSNSを媒体にするのか等、深くマーケティングが関わってきます。そのため場当たり的な戦略ではなく、緻密にマーケティング戦略を練る必要があるでしょう。

6 D2CとLTVの関係性

D2CはLTVをいかにして向上させるかがポイントになってきます。

D2Cブランドは5章でも前述したとおり、初期費用が掛かってしまう分CPA(顧客獲得コスト)が高くなります。CPAを掛けた分、LTVで回収する必要があるでしょう。LTVが低いと比例してCPAも低く抑える必要があるため、注意が必要です。

LTVに関してはコンテンツもありますので、こちらも併せてご覧ください。「顧客ロイヤリティ向上に欠かせない指標「LTV」について学ぼう」

最後に

D2Cはデジタルを起点として、ブランドを作り上げていくことがポイントです。

また、顧客との関係性づくりに注力し、世界観やストーリーに投資することも重要でしょう。今後は、あらゆる業態でD2Cのような要素が求められてくるのではないでしょうか。

D2Cは全ての工程を自社で行うため、軌道に乗せるまでの時間を要します。ですが、現代のテクノロジーを駆使することによりゼロベースからビジネスを創り上げることが可能です。このような点もD2Cの魅力でしょう。

今後このD2Cに注目しつつ、自社のサービスやマーケティングを見直してみることも大切ですね。

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